前回は、なぜ技能実習制度に代わる制度として「育成就労制度」が創設されたのかについて解説しました。
育成就労制度はなぜ創設された?技能実習制度から変わる理由をわかりやすく解説【第1回】
では、実際に育成就労制度が始まると、外国人はどのような仕事に従事することができるのでしょうか。
育成就労制度の「業務」を理解するうえで重要なのが、
- 育成就労産業分野・業務区分
- 業務区分の範囲の業務
- 関連業務
- 主たる技能
- 必須業務
という5つのポイントです。
今回は、育成就労制度における「仕事の範囲」を整理してみます。
1.育成就労では「業務区分」が基本になる
育成就労外国人が従事できる仕事は、自由に決められるわけではありません。
まず、育成就労制度では、受入れ対象となる「育成就労産業分野」が定められており、その中に具体的な「業務区分」が設定されています。
この「業務区分」は、単に仕事の名前を分類するだけのものではありません。
出入国在留管理庁の資料では、業務区分について、一定の知識・経験を必要とする技能の範囲を画するとともに、転籍の範囲を画するものとされています。
つまり、育成就労外国人が、
「どのような仕事の範囲で働くのか」
を決める基本的な単位が「業務区分」ということになります。
2.2026年1月23日に決定された「育成就労産業分野・業務区分」
では、具体的にどのような分野・業務区分があるのでしょうか。
2026年1月23日、政府は特定技能制度と育成就労制度について、分野別運用方針を閣議決定しました。
その中で、育成就労の対象となる産業分野・業務区分も定められています。
現在公表されている一覧を整理すると、次のとおりです。
育成就労産業分野・業務区分一覧
| 分野 | 業務区分 |
|---|---|
| 介護 | 介護 |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング |
| リネンサプライ | リネンサプライ |
| 工業製品製造業 | 機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理、紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、RPF製造、陶磁器製品製造、印刷・製本、紡織製品製造、縫製、電線・ケーブル製造、プレハブ住宅製品製造、家具製造、定形・不定形耐火物製造、生コンクリート製造、ゴム製品製造、かばん製造 |
| 建設 | 土木、建築、ライフライン・設備 |
| 造船・舶用工業 | 造船、舶用機械、舶用電気電子機器 |
| 自動車整備 | 自動車整備、車体整備 |
| 宿泊 | 宿泊 |
| 鉄道 | 軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員、駅・車両清掃 |
| 物流倉庫 | 物流倉庫 |
| 農業 | 耕種農業、畜産農業 |
| 漁業 | 漁業、養殖業 |
| 飲食料品製造業 | 飲食料品製造業、水産加工業 |
| 外食業 | 外食業 |
| 林業 | 林業 |
| 木材産業 | 木材産業 |
| 資源循環 | 廃棄物処分業(中間処理) |
出入国在留管理庁が公表している「育成就労産業分野・業務区分の一覧」に基づくものです。
**航空分野と自動車運送業分野については、特定技能の対象分野ではあるものの、育成就労産業分野は設定されていません。**また、物流倉庫・資源循環などについては、省令等の準備が整い次第、受入れが可能となる扱いがあります。
このように見ると、「育成就労」と一口にいっても、非常に幅広い産業分野が対象となっていることが分かります。
3.育成就労の業務範囲は「特定技能1号」とつながっている
ここで、もう一つ重要なポイントがあります。
育成就労制度では、育成就労で身につける技能と、将来の特定技能1号への移行を見据えた制度設計がされています。
そのため、育成就労の業務区分についても、特定技能制度との整合性が図られています。
なぜでしょうか。
それは、育成就労制度が、
外国人を3年間の就労を通じて育成し、特定技能1号水準の人材につなげる
という仕組みだからです。
つまり、
育成就労で仕事を覚える
↓
その業務区分に必要な技能を身につける
↓
特定技能1号として働く
という流れを想定しています。
そのため、技能実習制度のように「職種・作業」を細かく区切る考え方から、「業務区分」という大きな枠組みで技能を育成する仕組みへと変わります。
4.業務区分の中で「どんな仕事」をするのか
では、業務区分が決まっていれば、その中の仕事を自由に行えるのでしょうか。
そういうわけではありません。
育成就労制度では、業務区分の中に、育成するべき技能として**「主たる技能」**を設定します。
そして、その「主たる技能」を身につけるために必要な業務を**「必須業務」**といいます。
つまり、
業務区分=仕事の大きな範囲
その中に、
主たる技能=育成する中心的な技能
があり、
その技能を身につけるために、
必須業務=必ず経験すべき業務
が設定される、という構造です。
出入国在留管理庁の資料でも、「主たる技能」は業務区分の範囲内で設定される技能の単位とされ、「必須業務」はその技能を身につけるために必要な業務とされています。
5.「必須業務」は就労時間の3分の1以上
育成就労制度には、技能をしっかり身につけてもらうための重要なルールがあります。
それが、
必須業務について、育成就労外国人の就労時間の3分の1以上を確保する
という仕組みです。
つまり、業務区分の中で幅広い業務を経験できる一方、
育成する技能とは関係のない仕事ばかりをさせることはできません。
あくまで、主たる技能を身につけるための必須業務を中心として、計画的に技能を育成する必要があります。
ここは、育成就労制度を理解するうえで非常に重要な部分です。
6.「関連業務」も行うことができる
では、必須業務以外の仕事は一切できないのでしょうか。
そうではありません。
育成就労制度では、必須業務に加えて、それぞれの業務区分の範囲内で、当該業務と関連する業務に従事することができます。
ここで重要なのは、
「関連業務なら何でもできる」というわけではない
という点です。
育成就労では、まず「主たる技能」を修得するための必須業務に、業務に従事する時間全体の3分の1以上従事する必要があります。
そのうえで、対象となる業務区分の範囲内で、その業務と関連する仕事に従事することができます。
例えば、工業製品製造業で育成就労外国人を受け入れる場合、
「工場だから、工場内の仕事なら何でも任せられる」
ということではありません。
どの業務区分に該当するのか、その業務区分の中でどのような技能を育成するのか、そして実際に行う仕事がその業務と関連しているのか
を確認する必要があります。
つまり、育成就労制度では、
必須業務=技能を身につけるための中心となる仕事
関連業務=その業務に関連して行う仕事
という関係で考えると分かりやすいでしょう。
また、具体的にどのような業務が認められるのかについては、分野・業務区分ごとに定められている運用要領などを確認することが重要です。
「会社で必要な仕事だから」という理由だけで、育成就労外国人に自由に別の仕事をさせることができるわけではありません。
育成就労では、あくまで『技能を育成するための業務』という視点から、実際の仕事内容を確認することが大切です。
7.技能実習制度の「関連業務」「周辺業務」とは違う
ここは、技能実習制度から育成就労制度へ移行する際に注意したいところです。
育成就労制度にも「関連業務」という言葉がありますが、技能実習制度における関連業務と同じものではありません。
また、技能実習制度で使われていた「周辺業務」という考え方が、そのまま育成就労制度に引き継がれるわけでもありません。
育成就労制度では、
主たる技能を育成するための必須業務
を軸にしながら、
- 業務区分の範囲内の業務
- 当該業務と関連する業務
を組み合わせていくという考え方になります。
したがって、
「技能実習で周辺業務として認められていたから、育成就労でもできる」
とは単純には判断できません。
実際に従事できる業務については、各分野の分野別運用方針・運用要領を確認する必要があります。
8.複数の産業分野を自由に掛け持ちできるわけではない
育成就労制度では、複数の育成就労産業分野を自由にまたいで働くことはできません。
例えば、
「夏は農業、冬は漁業」
というように、季節に応じて異なる分野で働くことは認められていません。
これは、育成就労制度において、人材育成の一貫性を確保することが重視されているためです。
したがって、育成就労では、
「人手が必要な分野を季節ごとに自由に移動して働く」
というような仕組みにはなっていません。
なお、農業・漁業については、一定の要件のもとで派遣形態による育成就労が認められる仕組みもあります。
この点についても、通常の「複数分野を自由に掛け持ちする」という考え方とは区別して理解する必要があります。
9.技能実習制度から何が変わるのか
最後に、業務の考え方を技能実習制度と比較してみましょう。
| 技能実習制度 | 育成就労制度 | |
|---|---|---|
| 業務の基本単位 | 職種・作業 | 業務区分 |
| 業務の範囲 | 職種・作業ごとに定められる | 業務区分の範囲 |
| 育成する技能 | 技能実習計画に基づく | 「主たる技能」を設定 |
| 必須となる業務 | 技能実習制度の仕組みに基づく | 「必須業務」を設定 |
| 必須業務の割合 | ― | 就労時間の3分の1以上 |
| 関連業務 | 技能実習制度上の関連業務 | 業務区分の範囲内で、当該業務と関連する業務 |
| 周辺業務 | あり | 旧制度の「周辺業務」という考え方は引き継がれない |
育成就労制度では、業務の範囲を「業務区分」という枠組みで整理しながら、その中で育成する技能を明確にしていく仕組みになっています。
まとめ
今回は、育成就労制度の「業務」について解説しました。
ポイントは次の3つです。
育成就労外国人は、定められた育成就労産業分野の業務区分の範囲内で業務に従事します。
2026年1月23日に分野別運用方針が閣議決定され、介護、建設、工業製品製造業、農業、飲食料品製造業、外食業など、幅広い分野が対象として整理されています。
関連業務として認められるのは、それぞれの業務区分の範囲内で、当該業務と関連する業務です。
育成就労制度では「主たる技能」を設定し、その技能を身につけるための必須業務に就労時間の3分の1以上従事することが求められます。
つまり、育成就労制度の「業務」を一言で表すなら、
「業務の範囲を業務区分で明確にし、その中で必要な技能を計画的に身につけてもらう仕組み」
と考えると分かりやすいでしょう。
技能実習制度から育成就労制度への変更は、単に制度の名称が変わるだけではありません。
「どのような仕事をさせるのか」
「どのような技能を身につけてもらうのか」
という部分にも、大きな変化があります。
次回は、この「育成」の期間に注目して、
「育成就労は何年間なのか?」
「なぜ3年間なのか?」
「3年後は特定技能1号へどう移行するのか?」
について解説します。
在留資格の手続きは、状況によって必要な対応が大きく変わります。
「自分の場合はどうなるのか」と迷ったときは、専門家に確認することが大切です。
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