これまでのシリーズでは、
第1回で「なぜ技能実習制度から育成就労制度へ変わるのか」
第2回で「育成就労ではどのような仕事をするのか」
第3回で「育成就労の期間はどうなるのか」
について解説しました。
では、育成就労の期間中に、外国人はどのような技能や日本語能力を身につけ、それをどのように確認するのでしょうか。
育成就労制度では、単に日本で働いて経験を積むだけではありません。
技能については段階的に試験を受け、日本語能力についても一定の水準を目標として育成していく仕組みになっています。
今回は、育成就労における「技能評価」と「日本語能力の育成」について解説します。
1.育成就労には「到達目標」がある
育成就労制度では、育成就労計画において、育成就労終了時に到達すべき技能・日本語能力の水準を「育成就労の目標」として定めます。
技能については、技能検定3級や育成就労評価試験など、日本語能力については原則として日本語教育参照枠A2相当の水準が目標となります。
ただし、具体的にどの試験を目標とするかは、分野別運用方針などによって定められます。
つまり、育成就労では、
「3年間働いて、何となく仕事を覚える」
というものではなく、
「どの水準まで技能と日本語能力を身につけるのか」をあらかじめ設定し、その到達状況を確認する
という仕組みになっています。
2.技能は「1年目」と「終了時」に段階的に評価する
技能については、育成就労の途中と終了時に、それぞれ試験を受けることになります。
基本的なイメージは次のとおりです。
| 時期 | 主な技能評価 | 水準 |
|---|
| 育成就労1年目終了まで | 技能検定基礎級または育成就労評価試験(初級) | 基礎的な技能・知識 |
| 育成就労終了まで | 技能検定3級または育成就労評価試験(専門級)など | 初級技能者が通常有すべき技能・知識 |
育成就労評価試験について、初級は技能検定基礎級と同等、専門級は技能検定3級と同等の水準とされています。
そのため、
1年目 → 基礎的な技能を確認
↓
育成就労終了時 → より高い技能水準を確認
という段階的な評価になっています。
3.試験は「受けること」自体にも意味がある
ここで注意したいのが、試験については「合格したかどうか」だけでなく、適切な時期に受験させること自体が育成就労実施者の重要な役割になっているという点です。
育成就労実施者は、育成就労外国人に対し、必要な時期に定められた試験を受験させる必要があります。
また、試験は希望した日に必ず受けられるとは限りません。
そのため、受験期限に間に合うよう、余裕を持って申し込みを行うことが重要です。
これは企業側の実務としても見落とせないポイントです。
4.試験にかかる費用を外国人本人に負担させてはいけない
育成就労の技能評価試験については、受験手数料だけではありません。
交通費や材料費など、受験に必要となる費用についても、育成就労外国人本人に負担させないこととされています。
技能評価試験の受験に必要な費用は、育成就労実施者が負担することとされています。
したがって、受入れ企業にとっては、
- 試験の申し込み
- 受験日の管理
- 受験に必要な費用の負担
- 受験に必要な時間の確保
まで含めて、計画的に対応する必要があります。
5.受験時間は「労働時間」として扱われる
さらに重要なのが、試験を受けるために必要な時間の取扱いです。
育成就労の開始から1年目までに受験が必要な試験や、育成就労の目標として定めた試験を受験させることは、育成就労実施者の義務とされています。
そのため、受験に必要な時間は労働時間として扱われます。
受験日を欠勤扱いにしたり、有給休暇を取得させたうえで受験させたりすることは認められていません。
育成就労を受け入れる企業にとって、これは実務上かなり重要なポイントです。
6.日本語能力も「A1 → A2」と段階的に育成する
育成就労では、技能だけでなく日本語能力についても目標が設定されています。
基本的な考え方は、
就労開始時:A1相当
↓
育成就労終了時:A2相当
という段階的な育成です。
出入国在留管理庁によると、育成就労開始から1年以内にA1相当の日本語能力を身につけ、試験を受けることが求められます。
そして、育成就労終了時には、原則としてA2相当の日本語能力を身につけ、試験に合格することが目標となります。
なお、分野の特性に応じて、A2相当より高い日本語能力を目標として設定することもあります。
7.日本語講習は「100時間以上」の機会を提供
日本語能力については、試験だけでなく、日本語を学ぶ機会を提供することも制度上重要になっています。
育成就労の開始にあたっては、A1相当の日本語能力について一定の要件が設けられています。
また、育成就労実施者は、育成就労の3年間の間に、A2相当を目標とする日本語講習を100時間以上受講する機会を提供する必要があります。
すでにA2相当の日本語能力試験に合格している場合などは、改めて受講させる必要はありません。
つまり、日本語についても、
「働きながら自然に覚えてください」
という考え方ではなく、
「必要な日本語能力を身につけられるよう、計画的に教育の機会を設ける」
という仕組みになっています。
8.技能と日本語、両方を育てることが重要
ここまで見てきたように、育成就労制度では、
1年目までに基礎的な技能水準を確認
↓
育成就労終了までに、より高い技能水準を確認
就労開始時にA1相当
↓
育成就労終了時に原則A2相当
というように、技能と日本語の両方を段階的に育成していく仕組みになっています。
そのため、育成就労を受け入れる企業にとっては、単に仕事を教えるだけではなく、
「いつまでに、どの技能を身につけてもらうのか」
「いつ試験を受けてもらうのか」
「日本語教育をどのように受けてもらうのか」
まで考えておくことが重要になります。
まとめ
今回は、育成就労制度における技能評価と日本語能力の育成について解説しました。
ポイントは次の3つです。
1年目までに基礎的な技能を確認し、育成就労終了までに、技能検定3級などに相当する水準を目指します。
受験に必要な費用は外国人本人に負担させず、受験に必要な時間も労働時間として扱われます。
就労開始時のA1相当から、育成就労終了時の原則A2相当を目指し、日本語講習を受ける機会も制度上設けられています。
育成就労制度は、外国人に「働いてもらう」だけの制度ではありません。
技能と日本語能力の両面から、目標を定めて人材を育成していく制度です。
次回は、こうした育成を実際に進めるために必要となる、「育成就労計画」には何を記載するのかについて解説します。
在留資格の手続きは、状況によって必要な対応が大きく変わります。
「自分の場合はどうなるのか」と迷ったときは、専門家に確認することが大切です。
入管業務に関するご相談は、ホームページのお問い合わせフォームから受け付けています。