これまでのシリーズでは、
について解説しました。
では、実際に育成就労を行う場合、外国人をどのように育成していくのでしょうか。
育成就労制度では、外国人を受け入れる前に、「育成就労計画」を作成し、その計画について認定を受ける必要があります。
育成就労計画には、外国人にどのような業務を行わせるのかだけではなく、従事する業務の時間数、目標とする試験、育成のための体制など、育成就労を適切に実施するための内容が定められます。
今回は、育成就労制度における「育成就労計画」について、何を記載するのか、また認定後に計画を変更する場合はどうなるのかを解説します。
1.育成就労計画とは何か
育成就労計画とは、育成就労外国人に行わせようとする育成就労の内容を記載する書面です。
育成就労外国人を受け入れるためには、外国人一人ひとりについて育成就労計画を作成し、認定を受ける必要があります。
育成就労計画は、単なる「受入れ予定表」ではありません。
どのような業務に従事してもらうのか、どの程度の時間その業務に従事するのか、どのような技能を身につけてもらうのか、どのような試験を目標とするのかなど、実際に行う育成就労の内容を具体的に定めるものです。
そして、認定された後は、その計画に沿って育成就労を行うことになります。
つまり、育成就労計画は、
「これからどのような育成就労を行うのか」
を事前に明らかにし、その内容に沿って育成就労を実施するための重要な書類だといえます。
2.育成就労計画には何を記載するのか
では、育成就労計画には具体的に何を記載するのでしょうか。
育成就労計画には、主に次のような事項が定められます。
| 主な項目 | 内容 |
|---|
| 従事させる業務 | 育成就労外国人が行う業務 |
| 業務ごとの時間数 | それぞれの業務に従事する時間 |
| 育成就労の目標 | 育成就労終了時に到達させる技能・日本語能力 |
| 目標とする試験 | 技能や日本語能力を確認するための試験 |
| 育成の実施体制 | 育成就労責任者など、育成を行う体制 |
| 育成の内容 | 技能を身につけるための具体的な育成内容 |
| 日本語教育 | 日本語能力の目標達成に必要な措置 |
| その他の事項 | 分野や育成就労の形態に応じて必要となる事項 |
このように、育成就労計画では、単に「工場で働く」「農業を行う」といった大まかな内容だけを定めるわけではありません。
どのような仕事を、どの程度行い、どのような技能・日本語能力を身につけてもらうのか
というところまで、計画として整理することになります。
なお、具体的な記載事項や認定基準については、育成就労の分野や形態などによって異なる場合があります。
3.育成就労計画は「認定」を受ける必要がある
育成就労計画は、企業が作成して保管しておけばよいというものではありません。
外国人育成就労機構から認定を受ける必要があります。
育成就労計画の認定では、作成された計画が育成就労制度の認定基準に適合しているかどうかが確認されます。
例えば、
- 従事させる業務
- 育成就労の目標
- 育成就労の内容
- 育成就労の期間
- 技能・日本語能力の評価
- 育成就労を行わせる体制
などについて、制度上の基準に適合している必要があります。
また、監理型育成就労の場合には、育成就労計画の作成について監理支援機関から指導を受けることが必要です。
したがって、育成就労計画は、受入れ企業が自由に内容を決めればよいものではありません。
制度上定められた基準を踏まえて作成する必要があります。
4.認定された計画に沿って育成就労を行う
育成就労計画が認定された後は、認定された計画に沿って育成就労を実施する必要があります。
例えば、計画に記載された業務とは異なる業務に従事させたり、計画と大きく異なる時間数で業務を行わせたりすることは、育成就労計画との不一致につながります。
育成就労計画は、受入れのために最初だけ作成する書類ではありません。
実際の育成就労の内容を規律する基準となるもの
と考えることが重要です。
そのため、受入れ企業では、認定された育成就労計画の内容を担当者だけでなく、実際に外国人の指導を行う現場の担当者も把握しておくことが重要になります。
5.育成就労計画を変更したい場合はどうする?
では、育成就労を開始した後に、
「当初の計画を変更したい」
という場合はどうなるのでしょうか。
育成就労計画は、一度認定を受けたからといって、どのような内容でも自由に変更できるわけではありません。
育成就労実施者は、原則として認定を受けた育成就労計画に従って育成就労を行う必要があります。
一方で、育成就労を開始した後に、事業上の事情などによって計画の変更が必要になる場合もあります。
そのため、変更の重要性や変更の程度に応じて、必要となる手続が分けられています。
具体的には、
① 新たな育成就労計画の認定
② 育成就労計画の変更認定
③ 軽微変更の届出
④ 特別な手続が不要
というように、変更内容によって取扱いが異なります。
したがって、育成就労計画の内容を変更する場合には、まず「どのような変更なのか」を確認し、それに応じた手続を行うことが重要です。
6.変更には「新たな認定」「変更認定」「軽微変更」「手続不要」がある
では、それぞれどのような場合に、どのような手続が必要になるのでしょうか。
育成就労実施者そのものが変わるなど、従前の育成就労計画とは実質的に異なる計画として扱われる場合には、新たな育成就労計画の認定が必要となります。
例えば、育成就労外国人が別の育成就労実施者へ転籍する場合には、転籍後の新しい育成就労計画について認定を受ける必要があります。
この場合、単に現在の育成就労計画を書き換えるのではなく、新しい育成就労計画を作成して認定を受けることになります。
育成就労実施者自体は変わらないものの、認定された計画の重要な事項を変更する場合には、育成就労計画の変更認定を受ける必要があります。
例えば、監理支援機関の変更など、育成就労の実施に重要な影響を与える変更がこれに該当します。
この場合、変更後の内容について改めて認定基準への適合性が確認されるため、変更する前に必要な手続を行うことが重要です。
また、育成就労の期間を当初の予定から延長する場合も、変更認定が必要とされています。
変更の重要性が比較的小さい場合には、育成就労計画の「軽微変更届出」で対応できる場合があります。
この場合、変更認定とは異なり、変更前に認定を受ける必要はありません。
変更事由が発生した後、定められた期間内に軽微変更の届出を行います。
例えば、育成就労計画に記載された具体的な業務内容の変更や、育成就労指導員の変更など、一定の事項については軽微変更の届出の対象となる場合があります。
ただし、すべての変更を「軽微変更」として扱えるわけではありません。
変更する内容によっては変更認定が必要となるため、変更前にその取扱いを確認することが重要です。
さらに、変更の程度が非常に小さい場合や、育成就労外国人にとって有利となる一定の変更については、特別な手続が不要とされる場合があります。
例えば、育成就労実施者の役職員の役職名の変更や、育成就労外国人の賃金の引上げなどがその例です。
このように、育成就労計画を変更する場合には、
| 変更の内容 | 必要となる手続 |
|---|
| 育成就労実施者が変わるなど、実質的に新しい計画となる場合 | 新たな育成就労計画の認定 |
| 重要な事項を変更する場合 | 育成就労計画の変更認定 |
| 比較的重要性の低い変更の場合 | 軽微変更の届出 |
| 非常に軽微な変更など | 特別な手続が不要 |
というように、変更の重要性や程度によって手続が分かれています。
そのため、
「小さな変更だから手続は必要ないだろう」
と自己判断するのではなく、変更する内容がどの区分に該当するのかを確認することが重要です。
育成就労計画は、認定を受けた後も、実際の育成就労の内容と一致しているかを継続的に確認する必要があります。
7.受入れ企業にとって育成就労計画が重要な理由
ここまで見てきたように、育成就労計画は単なる申請書類ではありません。
育成就労を開始する前に、
「誰に、どのような仕事をしてもらい、どのように育成するのか」
を具体的に計画し、その内容について認定を受けます。
そして、認定後は、その計画に沿って育成就労を実施します。
そのため、受入れ企業にとっては、
- 現場で実際に行わせる業務と計画が一致しているか
- 業務ごとの時間数に問題がないか
- 技能や日本語能力の育成を計画どおり進めているか
- 試験や日本語教育の予定を管理できているか
- 計画を変更する必要が生じた場合、どの手続が必要なのか
といった点を継続的に確認することが重要になります。
育成就労計画は、「作成して終わり」の書類ではなく、育成就労を実施するための基準となる計画なのです。
まとめ
今回は、育成就労制度における「育成就労計画」について解説しました。
ポイントは次の3つです。
業務内容や業務時間、育成の目標、目標とする試験、育成体制などを定めます。
育成就労計画は単なる社内資料ではなく、制度上の認定を受ける必要があり、認定後はその計画に沿って育成就労を行います。
育成就労実施者が変わるなど、新たな育成就労計画の認定が必要となる場合、変更認定を受ける場合、軽微変更の届出で対応できる場合、特別な手続が不要な場合があります。
育成就労制度では、「外国人を受け入れること」だけではなく、どのように育成するのかを事前に計画し、その計画に沿って実施することが重要になります。
在留資格の手続きは、状況によって必要な対応が大きく変わります。
「自分の場合はどうなるのか」と迷ったときは、専門家に確認することが大切です。
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