これまでのシリーズでは、
【第5回】育成就労計画とは?―何を記載し、変更するときはどうする?
について解説しました。
育成就労制度では、外国人が日本で働きながら技能を身につけ、将来的に特定技能1号への移行を目指します。
この制度を適正に運用するために重要な役割を担うのが「監理支援機関」です。
技能実習制度では「監理団体」が、技能実習生の受入れや実習実施者への監査・指導などを担ってきました。一方、育成就労制度では、外国人の保護や適正な育成をより確実にするため、監理支援機関の許可要件や監理体制が見直されています。
では、監理支援機関は具体的にどのような役割を担うのでしょうか。また、従来の監理団体と比べて、どのような点が変わるのでしょうか。
今回は、監理型育成就労と単独型育成就労の違いを整理したうえで、監理支援機関の役割、許可要件の厳格化、受入れ企業が知っておきたいポイントについて解説します。
1.監理型育成就労と単独型育成就労の違い
育成就労制度における外国人の受入れ方法には、「監理型育成就労」と「単独型育成就労」の2種類があります。
監理型育成就労とは、監理支援機関の支援・監理を受けながら外国人を受け入れる方法です。
主に、海外に子会社などを持たない企業や、海外との直接的な関係を利用した受入れが難しい企業などが利用することを想定した仕組みです。
監理支援機関は、外国人と受入れ企業との雇用関係の成立をあっせんするとともに、育成就労計画の作成指導、受入れ後の監査、外国人からの相談対応などを行います。
受入れ企業は、監理支援機関と連携しながら外国人の育成を進めていくことになります。
単独型育成就労とは、外国にある事業所などから外国人を受け入れ、企業単独の関係に基づいて育成就労を実施する方法です。
例えば、海外にある子会社などの職員を日本の事業所で一定期間受け入れ、技能や知識を身につけてもらうケースが考えられます。
単独型育成就労では、監理型育成就労のように監理支援機関を利用して受け入れるのではなく、受入れ企業自身が育成就労を実施します。
ただし、単独型であれば自由に外国人を受け入れられるわけではありません。対象となる外国人との関係や受入れの要件など、法令で定められた条件を満たす必要があります。
監理型と単独型の主な違い
| 項目 | 監理型育成就労 | 単独型育成就労 |
|---|---|---|
| 受入れ方法 | 監理支援機関を利用する | 企業単独の関係に基づいて受け入れる |
| 外国人のあっせん | 監理支援機関が担う | 監理支援機関によるあっせんを利用しない |
| 育成就労計画の作成 | 監理支援機関から作成指導を受ける | 受入れ企業が主体となって作成する |
| 監査・指導 | 監理支援機関による監査等を受ける | 監理支援機関による監査等は受けない |
| 相談対応 | 監理支援機関が外国人からの相談に対応する | 受入れ企業が自ら相談対応を行う |
※上表は両類型の基本的な違いを整理したものです。単独型育成就労についても、育成就労計画の認定や法令遵守などの要件があります。
2.監理支援機関の主な役割
監理支援機関は、監理型育成就労において、主に次の5つの業務を担います。
監理支援機関は、育成就労外国人と受入れ企業との雇用関係の成立をあっせんします。
企業の業務内容や受入れ体制などを踏まえ、外国人の受入れにつなげる役割です。
ただし、外国人を企業に紹介すれば役割が終わるわけではありません。受入れ後も、適正な育成就労が実施されるよう監理・支援を行うことが重要です。
監理支援機関は、監理型育成就労における入国後講習を実施します。
外国人が日本で生活し、働き始めるに当たって必要となる知識などを身につけられるよう、所定の講習を行います。
入国後講習は、外国人が日本での生活や職場での活動を円滑に始めるための重要な機会です。
育成就労計画には、育成就労の目標や期間、業務内容、技能・日本語能力の修得に関する事項などを記載します。
監理支援機関は、受入れ企業が適切な育成就労計画を作成できるよう指導します。
計画の内容が制度の目的に沿ったものとなっているか、実際の業務や育成方針と整合しているかなどを確認することが重要です。
監理支援機関は、受入れ企業である育成就労実施者に対して監査を行います。
育成就労計画に沿って外国人が育成されているか、法令に従った雇用管理が行われているかなどを確認します。
問題が確認された場合には、必要な指導や是正に向けた対応が求められます。
監理支援機関は、育成就労外国人からの相談にも対応します。
外国人が職場での問題や労働条件などについて相談できる体制を確保することは、外国人の保護にとって重要です。
受入れ企業に直接相談しにくい問題を抱えている場合でも、相談できる窓口があることは、外国人の権利保護につながります。
このように、監理支援機関は、外国人の受入れから育成、監査、相談対応まで幅広い役割を担っています。
3.監理支援機関の許可要件はなぜ厳格化されたのか?
育成就労制度では、技能実習制度の監理団体と比べて、監理支援機関の許可要件が厳格化されています。
その背景には、監理団体が受入れ企業から監理費を受け取る構造により、受入れ企業との利害関係が生じ、外国人の保護よりも企業側の利益が優先されるおそれがあるという課題がありました。
また、監理団体の人員や監理体制によっては、十分な監査・指導や外国人への支援を行うことが難しい場合もあります。
こうした課題を踏まえ、育成就労制度では、監理支援機関が受入れ企業から独立した立場で監理・支援を行い、外国人の保護を適切に実施できるよう、許可要件が見直されています。
ここでは、主な変更点を確認します。
技能実習制度では、監理団体の外部監査について、外部役員の選任などの仕組みが設けられていました。
これに対して、育成就労制度では、監理支援機関に外部監査人を設置することが義務付けられています。
外部監査人は、監理支援機関の監理・支援業務が適正に行われているかを、外部の立場から確認する役割を担います。
外部監査人には、養成講習の受講や専門的な知見など、法令で定められた要件があります。また、監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と密接な関係を有しないことなど、外部性・独立性を確保するための条件も設けられています。
さらに、外部監査人の氏名は公表される仕組みとなっています。
外部監査人を設置するだけでなく、実際に公正な監査ができる体制を確保することが重要です。
監理支援機関の独立性・中立性を確保するため、育成就労実施者と密接な関係を有する役職員が、その育成就労実施者に関する監理支援業務に関与することは制限されています。
例えば、監理支援機関の役職員が、監理支援を行う企業の役員などを兼任している場合、その関係によって監査や指導の公正性が損なわれるおそれがあります。
そこで、育成就労制度では、育成就労実施者と密接な関係を有する役職員が、当該実施者に係るあっせん、監査・指導、保護・支援などの業務に関与することが禁止されています。
ただし、ここで重要なのは、すべての役職員が一律に関与できなくなるという意味ではなく、密接な関係を有する役職員による、当該実施者に関する業務への関与が制限されるという点です。
監理支援機関が特定の受入れ企業に過度に依存すると、監理・指導の中立性が損なわれるおそれがあります。
このため、監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者の数について、原則として2者以上であることが許可要件として設けられています。
これは、監理支援機関が一つの受入れ企業だけに依存することを避け、独立した立場で監理・支援を行える体制を確保するための仕組みです。
監理支援機関には、監理・支援業務を適切に実施できる人員体制が求められます。
主な要件は、次のとおりです。
- 監理支援事業の実務に従事する常勤の役職員が2人以上であること
- 常勤役職員1人当たりの監理対象となる育成就労実施者の数が、原則として8者未満となること
- 常勤役職員1人当たりの監理対象となる育成就労外国人の数が、原則として40人未満となること
つまり、受入れ企業や外国人の数に対して、十分な人員を配置できる体制が求められます。
例えば、監理対象となる外国人が増えれば、それに応じて監理・支援業務の負担も増加します。必要な人員が確保されていなければ、監査や相談対応などが十分に行われないおそれがあります。
なお、これらは基本となる許可基準の説明です。実際の許可審査では、法令上の算定方法やその他の基準も確認する必要があります。
監理支援機関には、財務面での安定性も求められます。
育成就労制度では、許可要件として債務超過がないことが定められています。
監理支援機関の財務状況が不安定であれば、継続的な監理・支援業務の実施に支障が生じる可能性があります。
外国人の保護や受入れ企業への監理・指導を継続して行うためにも、安定した運営基盤を確保することが重要です。
監理支援機関には、受入れ企業に対する監理・支援を適切に実施できる体制が求められます。
そのため、監理支援を行う育成就労実施者との位置関係についても、原則として、監理支援機関の事業所から日帰りで監理支援を行える場所にあることが要件とされています。
ただし、法令上、一定の例外も設けられています。
地理的な要件は、緊急時に速やかに受入れ企業へ赴き、必要な保護や支援を行える体制を確保するという観点から重要です。
監理支援機関は、書類上の確認だけでなく、必要に応じて現場で状況を確認し、適切に対応できる体制を整える必要があります。
4.監理団体と監理支援機関の違いを整理する
ここまでの内容を踏まえ、両者の違いを整理します。
| 比較項目 | 技能実習制度の監理団体 | 育成就労制度の監理支援機関 |
|---|---|---|
| 許可 | 監理団体としての許可 | 新たに監理支援機関としての許可が必要 |
| 外部監査 | 外部役員の選任などの仕組み | 外部監査人の設置が義務化 |
| 独立性・中立性 | 従来の許可基準等に基づく | 受入れ企業との密接な関係にある役職員の業務関与を制限 |
| 人員体制 | 従来の許可基準等に基づく | 常勤役職員数や監理対象数に関する基準を設定 |
| 財務要件 | 従来の許可基準等に基づく | 債務超過がないことを要件化 |
| 地理的要件 | 従来の許可基準等に基づく | 監理支援を適切に行える位置関係を要件化 |
※表は主な相違点を整理したものです。各制度の具体的な要件は、関係法令・省令等をご確認ください。
特に重要なのは、技能実習制度で監理団体として許可を受けていた場合でも、育成就労制度で監理支援事業を行うには、新たに監理支援機関としての許可を受ける必要があるという点です。
従来の監理団体が、そのまま自動的に監理支援機関へ移行できるわけではありません。
5.受入れ企業は何に注意すべきか?
監理支援機関の許可要件が厳格化されたことは、受入れ企業にとっても重要な意味があります。
育成就労制度では、監理支援機関に監理・支援を任せればよいというわけではありません。受入れ企業自身も、雇用主として適正な受入れ体制を整える必要があります。
具体的には、次の点を意識しておきましょう。
技能実習制度で付き合いのあった監理団体を利用する場合でも、育成就労制度において監理支援事業を行うための許可を受けているか確認することが重要です。
今後、監理支援機関を選ぶ際には、許可の有無だけでなく、監査・指導の体制や外国人からの相談対応などについても確認しておくとよいでしょう。
受入れ企業は、認定された育成就労計画に沿って外国人を育成しなければなりません。
実際の業務内容や技能習得の状況が計画と異なっていないか、定期的に確認することが重要です。
育成就労外国人も、日本で働く労働者です。
労働基準法や最低賃金法などの関係法令を遵守し、賃金、労働時間、休日、安全衛生などについて適正な雇用管理を行う必要があります。
監理支援機関が関与しているからといって、受入れ企業が雇用主としての責任を免れるわけではありません。
外国人が職場で困ったことや労働条件について相談できる環境を整えることも重要です。
問題を早期に把握し、必要に応じて監理支援機関などと連携することで、深刻なトラブルを防ぎやすくなります。
監理支援機関と受入れ企業がそれぞれの役割を理解し、協力して外国人の育成と保護に取り組むことが求められます。
6.まとめ
今回は、育成就労制度における監理支援機関の役割と、技能実習制度の監理団体との違いについて解説しました。
監理支援機関は、外国人のあっせん、入国後講習、育成就労計画の作成指導、受入れ企業への監査、外国人からの相談対応など、幅広い業務を担います。
また、育成就労制度では、監理支援機関が独立性・中立性を確保し、適正な監理・支援を行えるよう、外部監査人の設置、人員体制、財務状況、地理的要件などが見直されています。
受入れ企業にとっても、監理支援機関の許可や監理体制を確認することは、適正な外国人受入れを進めるうえで重要です。
育成就労制度の開始に向けて、監理支援機関と受入れ企業がそれぞれの役割を理解し、外国人の技能習得と保護を両立できる体制を整えていきましょう。
次回は、育成就労制度における「転籍」について、本人の意向による転籍が認められる条件や、受入れ企業が注意すべきポイントを解説する予定です。
在留資格の手続きは、状況によって必要な対応が大きく変わります。
「自分の場合はどうなるのか」と迷ったときは、専門家に確認することが大切です。
入管業務に関するご相談は、ホームページのお問い合わせフォームから受け付けています。