在留資格の取消しとは

在留資格の取消しとは、日本に在留する外国人が偽りその他不正の手段により上陸許可等を受けた場合在留資格に基づく本来の活動を一定期間行わないで在留していた場合などに、その外国人の在留資格を取り消す制度です。外国人が不正の手段により上陸許可や在留関係の許可を受けた場合、その許可には瑕疵がありますが、その瑕疵を理由として取り消すものは、瑕疵のある許可ではなく、その外国人が現に有する在留資格であり、取消しの効果は遡及しません。

行政法の一般法理によれば、このような許可は、瑕疵ある行政処分として取り消すことができ、取消しの効果は遡及するとされています(講学上の取消し)。したがって、不正の手段によって受けた上陸許可を取り消す場合、その許可はなかった状態になりますので、その後に在留期間の更新、在留資格の変更、再入国などの許可を受けているときは、これらの許可も根拠がなくなって失効し、再入国許可による上陸が不法上陸になるなどの影響が生じます。在留資格の取消制度が設けられるまでは、上陸許可や在留関係の許可など在留資格の決定を伴う許可についても講学上の取消しが行われていましたが、前述した取消しに伴う影響などを考慮して慎重に行わざるを得ず、不正行為への対応が抑制されていましたので、過去の不正行為を理由として取り消すものの、取消しの対象は許可ではなく現に有する在留資格とし、取消しの効果を遡及させない制度が設けられました。この制度の創設に伴い、在留資格の決定を伴う許可については、講学上の取消しはできなくなったものと解されています。なお、在留資格の取消しは、取り消すことができるものであり、取消事由に該当すれば必ず取り消さなければならないものではありません

在留資格の取消しが行われた場合、その効果は遡及しませんが、その在留資格を前提として許可された再入国許可や資格外活動許可は当然に失効するほか、中長期在留者については、中長期在留者でなくなることにより、所持する在留カードが失効しますので、その返納義務が生じます。

どのような場合に在留資格の取消しになるか

在留資格の取消しは、入管法22条の4第1項各号に定める事実が判明した場合に行われますが、その事実は、次のとおりです。

① 上陸拒否事由に該当しないものと偽り、上陸許可を受けたこと
② ①のほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可等を受けたこと
③ ①、②のほか、不実記載の文書や図面を提出又は提示して上陸許可等を受けたこと
④ 偽りその他不正の手段により、在留特別許可又は仮滞在許可に係る在留資格取得許可を受けたこと
⑤ 在留資格に係る活動を行わず、他の活動を行い又は行おうとして在留していること
⑥ 在留資格に係る活動を継続して3月(高度専門職2号は6月)以上行わずに在留していること
⑦ 配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わずに在留していること
⑧ 新たに中長期在留者となった者が90日以内に住居地の届出をしないこと
⑨ 転居した者が90日以内に新住居地の届出をしないこと
⑩ 虚偽の住居地を届け出たこと

②と③の「上陸許可等」とは上陸許可のほか、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可、永住許可及び在留資格の取得許可をいい、これらが複数ある場合は、直近のものをいいます。また、④は在留特別許可後に更に在留特別許可や上陸許可等を受けた場合、⑤~⑨は正当な理由がある場合には、それぞれ対象になりません。取消対象となる者については、⑤と⑥は活動資格(入管法別表1)をもって在留する者、⑦は日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等の在留資格をもって在留する者、⑧~⑩は中長期在留者にそれぞれ限られます。

取消事由に該当しても在留資格が取り消されない場合

在留資格の取消しは、「取り消すことができる」ものであり、必ず取り消さなければならないものではありません。外国人が取消事由に該当しても、個々の事情を勘案して、その外国人の在留を引き続き認めるに足りる相当の理由があると判断されれば、在留資格は取り消されません。

具体的には、例えば、入管法第22条の4第1項5号から7号までに該当するもの(在留資格に係る活動を一定期間行っていない)として意見聴取が行われたものの、他の在留資格に該当する活動を行っていることが判明し、その在留資格への変更申請が行われた場合に許可が見込まれる場合には、引き続き在留を認めるに足りる相当な理由があると判断され、在留資格を取り消すことなく、在留資格変更申請が受け付けられることになります。同項7号に該当する場合には、対象となる外国人に対して、在留資格変更申請又は永住申請の機会を与えるように配慮しなければならないとされていますので(入管法22条の5)、配偶者としての活動を行わないで在留していることにつき正当な理由が認められないときは、在留資格変更申請又は永住申請を行うことができる旨の説明が行われ、その説明を受けた外国人が申請を希望したときは、申請が受け付けられて、その処理が優先して行われますが、明文のないこれ以外の場合でも、在留資格変更申請等の機会を与えることが適切と判断されるときは、その機会を与えるように配慮されています。

また、入管法22条の4第1項8号又は9号(住居地の届出を一定期間していない)に該当する事案のうち、対象となる外国人が16歳未満であり、住居地届出の代理義務者の義務不履行等により生じている場合には、取消手続が終了されることがあります。

在留資格が取り消された外国人の、その後

在留資格が取り消される場合、取消事由によってその後の扱いは異なり、退去強制の対象となるものと出国期間が指定されるものがあります。以下は、入管法22条の4第1項に定める取消事由の号番号です。

① 次の事由に該当して在留資格を取り消された外国人は、悪質性が高いものとして直ちに退去強制の対象となりま         す。

  • 1号(上陸拒否事由に該当しないものと偽り、上陸許可を受けたこと)
  • 2号(1号のほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可等を受けたこと)

② 次の事由に該当して在留資格を取り消された外国人は、出国期間が指定されます。

  • 3号(1、2号のほか、不実記載の文書や図面を提出等して上陸許可等を受けたこと)
  • 4号(偽りその他不正の手段により、在留特別許可等を受けたこと)
  • 6号(在留資格に係る活動を継続して3月(高度専門職2号は6月)以上行わないこと)
  • 7号(配偶者としての活動を継続して6月以上行わないこと)
  • 8号 (住居地の届出を90日以内に行わないこと)
  • 9号(新居住地の届出を90日以内に行わないこと) 
  • 10号(虚偽の住居地を届け出たこと)

③ 次の事由に該当して在留資格を取り消された外国人は、その外国人が逃亡すると疑うに足る相当の理由があるときは直ちに退去強制の対象となりますが、それ以外は出国期間が指定されます。

  • 5号(在留資格に係る活動を行わず、他の活動を行い又は行おうとして在留していること)

逃亡するに疑うに足る相当の理由がある場合とは、在留資格を取り消して出国期間を指定したとしても、その期間中に出国することなく、故意に行方をくらませて、退去を免れようとすることが疑われ、その疑いを抱くことにつき相当の理由がある場合をいいます。その判断に当たっては、当該外国人の生活状況、在留資格に応じた活動を行わなくなった経緯、背後関係の有無、取消事由が発覚した経緯、取消手続中の挙動等の事情が総合的に判断されます。

例えば、技能実習生が実習先から無断で離脱して行方不明になった場合や、在留資格取消手続における意見聴取のために呼出しに正当な理由がないのに応じない場合などは、それ自体が逃亡を疑わせる一つの要素になりますので、逃亡するに疑うに足りる相当の理由があると判断される可能性が高く、逆に、それまでの日本での生活状況や人間関係、本国の家族とのやり取り等に照らし、逃亡よりも出国を選ぶ可能性が高いと客観的に認められる場合には、その理由はないとの判断になることが見込まれます。

④ 出国期間の指定については、30日を超えない範囲内で出国するために必要な期間が指定され、外国人に自主的に出国する機会が与えられますが(入管法22条の4第7項)、その指定に当たっては、住居及び行動範囲の制限、就労禁止等の条件が付されます(同条8項、施行規則25条の13第2項)。なお、出国期間の指定を受けた外国人であっても、その期間内に出国することなく、その期間を経過して日本に残留した場合には、退去強制の対象となります。(入管法24条2号の4)。

その後の不利益はあるか

在留資格を取り消され、出国期間の指定を受けた外国人がその期間内に出国した場合は、退去強制や出国命令の場合のように、一定期間は上陸拒否事由に該当するなど上陸条件に直接影響することはありません。しかし、不利益を受ける可能性が全くないかといえば、在留資格の取消しが行われた記録は残っていますので、その後の入国・在留手続において、その記録の内容も踏まえて審査が行われることにより、結果に影響を及ぼす可能性があることについては否定できません。

まとめ

在留資格の取消しは、

👉 単なる手続ミスではなく「在留そのものを失う重大な行政処分」です。

■ 押さえるべきポイント

  • 不正取得や活動実態の欠如が主な取消事由
  • 取消しは「遡及しない」が、在留資格はその時点で失効
  • 再入国許可・資格外活動許可・在留カードも連動して失効


■ 実務上の重要点

  • 3か月・6か月の「活動実態なし」は特に要注意
  • 住居地届出の遅れも取消事由になり得る
  • 取消しは義務ではなく、個別事情で回避される余地もある

■ 取消後のリスク

  • 不正取得系 → 原則「即退去強制」
  • その他 → 出国期間の指定(ただし違反すれば退去強制)

■ 最後に

👉 在留資格は「持っているだけ」では維持できません。

  • 実態に合った活動
  • 適正な届出
  • 正確な申請

これらを継続して初めて維持されるものです。

👉 “許可を取ること”よりも、“維持し続けること”が重要。

この視点が、実務上の最大のリスク回避になります。

在留資格の手続きは、状況によって必要な対応が大きく変わります。
「自分の場合はどうなるのか」と迷ったときは、専門家に確認することが大切です。

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清水純樹国際行政書士事務所